映画「阪急電車」

どうしても見ておこうと思いました。


というのも、この西宮北口〜宝塚の短い区間の、この路線に並々ならぬ思いが、僕にもあるからなのです。
この映画に出てくる関西学院大学は、僕の母校でもありまして、当時の僕には絵に描いたような青春らしきものは、残念ながらほとんど(?)ありませんでしたが、この学校に通えた4年間はそれは幸せなものでした。


本当に静かで緑の多い、芯から落ち着いたいい環境で、常識的でおっとりした学生も多くて、僕には最高に居心地がよかった。
通学は甲東園という駅から学校までバスか徒歩が一番よく使われるルートですが、宝塚よりの隣の仁川駅から川沿いに20分ほど歩くコースが僕は大好きで、ウォークマンで好きな音楽を聞きながらのその道の光景は、僕の思い出の一ページとして一生忘れられないものです。


あと、沿線に住んだことはないのですが、「阪急電車」も大好きでした。これまでずっと関西でも東京でも、よく周りの人には阪急電車が一番好きだと言ってきました、おそらくそういう方は多いと思います。


というわけで、映画のことがほったらかしになってしまいましたが、そもそも見た動機の第一は、自分の阪急電車と学校に対する思い入れからだったのです。
そこで映画はといいますと、これがすごくよかった。実は予告編しか知らなかった時点では、そんなに期待できるものじゃなかったんです。最初は映画の内容ではなく、あの界隈がどう映されているのかを見ようというぐらいのものでした。


それが実際に映画を見たんですが、いい意味で想像を裏切られたんです。


映画としての作品の質の高さというのとはまた違いますが、ストーリーや登場人物の会話がよかった。
テレビにしても映画にしても、派手な話や大げさな話で盛り上がったり話題を集めるわけですが、実際に普段の生活をコツコツと幸せにおくるために、人には何が必要なんだろう、それは決してそんな派手にリッチなことや幸せの押し売りなどではなく、ちょっとした人と人の思いやりであったり、優しさであったり、そういうことなんだ。この映画にはそのことが丁寧に描かれていました。
あるようで実際にはなかなかない、そんな「普通」を描いた、いい映画でした。


20過ぎまでの若い人より、人生には絵に描いたような幸せなどない、そういうことが分かって、さらにそのことを受け入れる余裕ができる年齢以上の人に、特にお薦めできますね。


キャストはだいたい満足、特に若いカップル役の谷村美月勝地涼は目をひきました、映画をひきしめたと思いますね、素晴らしい。あと芦田愛菜ちゃんって子はかわいい、有名な子役みたいだけど、相当頭のいい子なんじゃないでしょうか。
数人のキャストの不自然(お笑い芸人からのステレオタイプ的)な関西弁がやっぱりネイティブとしては気になったんですが、それなら中谷美紀宮本信子のようにほぼそのまま標準語でいいと思うんですよね。
あとネット検索すると、戸田恵梨香の人気が高いようですが、(あくまで)個人的には北川景子と同じくその人気がいまひとつ理解できないところです。


映画としては中谷美紀を黒いスーツを着たサラリーマンやOLらがどんどん通りすぎていくカットはよかったーー、あれは「映画」ですね。

言いたいことは他にもありますが、このへんで。