「アリスの見習い物語」

という邦題で、原題が「The Midwife's Apprentice」(助産婦の弟子)というニューベリーメダル受賞の児童書を読み終えました。


いやぁ、よかったですね。
中世イギリスのある村の、孤児で名前すら持たず(のちにアリスと自ら名づける)、寒さをしのぐため堆肥の中で眠っているため「ふんころがし」と呼ばれる少女が、ある助産婦(産婆)に拾われて見習いとして働いていくことで、生きる糧と自分自身を見つけていくお話し。
修養することの地道でつらいこと、かたやそこにある喜びや、自分の仕事を見つけて境遇を克服していくこと、そして人の無情と温かさが書かれています。ファンタジー性はないものの物語としては「魔女の宅急便」に近い印象を受けました。
ネイティブでない自分には、実際の英文の持つ意味以上の、文体の良し悪しは分かりづらいところですが、この文章には簡潔で力強い印象を受けました。


それにしても、この少女の境遇は悲惨です。
著者のあとがきにて、当時の時代背景にもきちんと触れられているわけですが、あらためて今の時代に生まれてきたことの幸せを思います。もっとも現代でも生きることは大変なことで、地球村の多くの住人は今だ悲惨な生い立ちにいて、先進国でも不幸な境遇は山とありますし、たとえ見た目は普通の家庭であっても、親を選べない子供たちには、重い心の傷を負っている場合も普通にあることでしょう。
それでも、そうであったとしても、中世と今を比べてみると、科学技術だけじゃなく、生きることに意味を見出して幸せを求めてきた人類の歴史はやっぱりすごいなと思うのです。


それから、考えてみてください、日本で知られる西洋の童話/児童書には、孤児が主人公の話が多くないですか?
赤毛のアンアルプスの少女ハイジあしながおじさん、オリバーツイスト、(たしか)小公女、小公子、秘密の花園、(あれどうだったかな?)白雪姫、シンデレラ、ヘンゼルとグレーテル・・・等々、そのことは僕が読んだ「速読速聴・英単語Core 1900 ver.4」にも記事が紹介されていましたが、そこには何か教訓や背景が隠されているんだと思われます。本当は怖いグリム童話の世界ですね、当時の歴史・時代・風俗背景を深く追っていけばいろいろ分かってくる気がします。
そうそう!ハリーポッターだってそうじゃないですか。


さて話を「The Midwife's Apprentice」に戻しますが、「アリスの見習い物語」という邦題はどうでしょう?ネットで見てみると、不満のある方もいるようですが、僕はうまい邦題だとは思います、さすがに素人には考えつかないタイトルだなと。そもそも「助産婦の弟子」だと果たして子供が興味を持つでしょうか?(苦笑)もっともそこには英語と日本語の重みの違いがあるのだとは思いますが。
ただ、うまい邦題ですが子供を子供扱いしずぎな気はしませんか?(笑)
あと、不遇な生まれの少女が、ただきれいになって王子さまやお金持ちの男にみそめられ幸せになるという他力本願なストーリーでなく、自立の物語だというところが、現代的なそしてアメリカ的な気がします。西洋では、聞くところによると「専業主婦」的な発想自体が少ないようですから。


あとおもしろいことなんですが、アマゾンである洋書を探すとすると表紙が2種類、またはそれ以上のパターンがあったりします。
この「The Midwife's Aprrentice」も二パターン見つけました。僕が読んだのはこの表紙・・・

この表紙の少女を想像しながら、本を読みましたので、悲惨な話ながらもどこかおどけた雰囲気も感じながら読んだわけです、


それがこの別の表紙を見てください・・・

・・・たしかに話の筋からするとこの表紙のほうがリアルでしょう、でもこれじゃとても重い気持ちで読むことになったでしょうね(笑)
この絵の感じ、僕の世代なら、宮城まり子さんが声をしていたアニメ「まんが世界昔ばなし」を思い浮かべます。(分かりますかw?)


どちらがいいかはともかく、
なるほど本の表紙は本当に作品の「顔」ですね。