時をかける少女

思い入れたっぷりです。

大林宜彦『時をかける少女』は洋画邦画問わず僕が最も好きな映画の一本です。
もはや映画作品というか、個人史の一ページ。
今までに50回近くは見てるんじゃないかと思います。
台詞を覚えるほど見ている。

そういうと僕の年齢からすれば、劇場公開時(1983年)、遅くとも10代の頃には見てそうなものですが、
これが実際に最初に見たのは、10年ほど前の30歳の頃なのです。
当時は仕事が忙しくてまったく友達とも遊べないような、そんな状態が当たり前で、
何よりの楽しみが、毎週休みの前日の夜に、大戸屋で定食を食べてビールを飲んで、
そして部屋に帰って明りを消してふとんに寝転びながら、映画やアニメを見ることでした。

近くにあったビデオレンタルが、チェーン店ではなく、ヨーロッパ映画から昔の渋い映画まで揃っているいい店だったことも幸いでした。
いろいろ見ました。
10代の頃から映画は好きでしたが、見るのは基本アメリカ映画だったこともあって、
その頃の思い込みで大林映画といえばアイドル映画で、作品自体よりもアイドルを見るための映画だと思っていました。

ああ今から思うとまったく恥ずかしい!

さて、今週は何にしようかと。
まあミル姉さんも紹介したし、
アイドル映画も時にはいいだろう、一度は大林映画でも見てやろうかと。(←スイマセン)

いつものように部屋を真っ暗に映画館状態にして、ガッコンとビデオを入れる。


「・・・・なんだ、これは」

「A MOVIE」白黒から始まってそこに少しづつ色が入って菜の花のシーンで一面カラーに。
続いて映画のタイトルから瓦屋根の街並みを背景に、制作者、出演者の名前が昔の日本映画にある美しい縦書きで流れる。
そして松任谷正隆の叙情的な音楽。
もうその時点でイメージしていたアイドル映画とはまったく違うと分かった、一気に映画に魅かれた。
見終わった後、感動に全く言葉もなかった。
とにかく映画が終わってほしくなかった、いつまでも映画の世界に浸っていたかった。

DVDに入っている大林監督のインタビューで、あの有名なエンディングは映画との別れを惜しむカーテンコールなんだと言っていたと記憶していますが、
本当にあのエンディングがなければ、別れがせつなすぎたかも知れない。
大林監督も言われるとおり、いろいろな幸運が合わさった映画だとしか思えない。


特に好きな台詞があります。
危険を考えもせず時空を超えて深町君に会いに行った芳山和子(原田知代)が言う。

「芳山君、どうしたの、どうしてここに来たの?!」
「会いたかったの、あなたに会いたかったの!」

カーーーーーッ!!
現実にはなさそうなこの台詞も、
あの原田知代が言うことでまったく嫌味がない。
まっすぐな純粋さに泣けてしまう。

何度かお薦めして女の人にも見てもらいましたが、映画の周辺情報を褒めるのみで、残念なことに映画自体が「おもしろい」とは聞いていません。
うーーむ、このよさは男にしか分からないのか・・?

この映画をきっかけに大林作品を見れるだけ見てきましたが、どれも傑作ばかり。(「金田一耕助の冒険」はちょっと微妙ですか・・)
だから不思議でしょうがない、明らかに日本を代表するすばらしい映画監督なのに、なぜか海外では知られていないように思うんです。


私事で恥ずかしいですが、落ち着かない夜にこの映画を流しながら寝ると、スーーッと気持ちよく眠れます。


* * * * * *

ミル姉さんYouTubeにあったww)
http://www.youtube.com/watch?v=dkQnTRmqET8&feature=player_embedded


(DVDも以前よりだいぶ安くなりましたね)

時をかける少女 デジタル・リマスター版 [DVD]

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