『ハックルベリイ・フィンの冒険』

押入れにあった読まずじまいの小説を読む作業つづく。。
アメリカのマーク・トウェインの130年ほど前の作品、『ハックルベリイ・フィンの冒険』(村岡花子訳/新潮文庫

おもしろかった。
子供の読み物というイメージがあるけど、大人になってからの経験と知識で、当時の社会を想像して読むほうがおもしろく読めると思う。想像以上に大人向けに書かれていた。
「おもしろい」とは言っても、痛快な冒険劇がドキドキワクワクおもしろいという感じじゃないんです。
ガリバー旅行記がファンタジーをカムフラージュに社会風刺をしているように、この小説では子供のハックの冒険を通すことで、その時代や社会を風刺しているように見える。

ハックの父親は飲んだくれで絶えず子供に暴力をふるう、ハックがよく言う言葉が「僕は育ちが悪いから」、詐欺師の二人組が善良で無知な人達をだます、時代はまだかなり荒々しく簡単に鉄砲がぶっ放される、そして人を人扱いしない黒人差別。
それでも、ハックの心が善良で、ストーリーも一応正義は勝つということでおさまっていることで救われ、話がまとまっている。

個人的にひとつ残念だったところは、ハックの物語なのに最後に出てきたトム・ソーヤーにおいしい所を持っていかれること。マンガの「名探偵コナン」で最後のおいしい所は毛利小五郎が持っていくような感じといえば、分かりやすいでしょうか・・


単純に古さの問題だとは思いますが、正直、今回は日本語が読みづらかったんです。
外国物でかつ古典で、当然日本語にない単語も多くさらに時代や文化の背景知識もない読者に向けて、読みやすく、かつ正確に翻訳をすることは想像もできないほど難しいことだとは思いますが、すでに翻訳自体が古典化していることは否めません。

ごく一部だけを取上げることはいけないですが、例えばトム・ソーヤーのセリフの中に「鋸歯状(きょしじょう)」という言葉が出てくるのですが、紋章の説明とはいえ、学者や専門家でないと分からないような単語を10歳の子供が使うことには違和感があります。


それでも、最初に書いたようにおもしろかった、読んでよかった。


次はドストエフスキーの『地下室の手記』(江川卓訳/新潮文庫
ドストエフスキーは「罪と罰」、「カラマーゾフの兄弟」、「白痴」を読んで以来、
今回は本の厚みがないのでちょっと気楽。。

出だしからして「ぼくは病んだ人間だ・・・・ぼくは意地の悪い人間だ。」

・・・らしい。。